訴訟を提起しなくとも業者側が任意に過払金の返還をしてくることはありますが、一般的には業者側が任意に過払金を返還してくるということは少なく、任意返還の提案があったとしても、法律上認められる過払金額の満額から減額された内容であることがほとんどです。
業者側が任意に過払金の返還をしないという場合や、業者側から提示された任意返還の額が減額された内容であり、減額分の返還も受けたいというような場合には、訴訟提起が必要となります。ただし、訴訟を提起し、返還を受けるには裁判所に納める訴訟費用(郵便切手、印紙代)や弁護士が出廷するための日当、交通費などの負担がかかるので費用倒れに終わる場合もあるほか、訴訟をすると時間がかかるという問題があります。そこで、ご自身の過払金額、訴訟をした後に業者から返還を受けられると見込まれる額と上記各費用や、訴訟をした後の返還までに見込まれる期間等を考慮して、訴訟提起するか否か検討する必要があります。
なお、業者によっては、訴訟を提起し、判決が出た後でも、なお一切返還をしないとか、返還をするにしても満額から相当減額した額のみ返還するという対応をとられる場合もあります。
判決が出た上での業者の返金対応に不満があれば、強制執行をすることも考えられます。しかし、強制執行をするには別途費用がかかります。また、強制執行をするには対象の財産を特定できなければなりません。仮に、強制執行の対象として、例えば業者の預金口座を特定でき、差し押さえることができたとしても、その時点で判決において認められた過払金額に見合う額の預金残高がなければ空振りに終わってしまうなどの問題があります。
このように、過払金返還請求における強制執行のハードルは高いといえます(強制執行をしなければ返金してこないような業者は資力が悪化している場合がほとんどで、結局強制執行が功を奏さない場合が多いです。)。