レイクと交渉を進める中で、以下の事柄が争点となることが多くあります。
当事務所は、過払い請求に際しては、過払い金の発生時点から年5分の割合による法定利息を付加して請求します。これに対し、新生フィナンシャルは「悪意の受益者」(民法第704条)にあたらないことを主張し、過払い金に対する法定利息の付加を否認します。
最高裁第二小法廷平成19年7月13日判決は、期限の利益喪失約款の問題以外のみなし弁済の要件がそろっていると消費者金融業者が信じていて、それがやむを得ないといえるような「特段の事情」のない限り、利息制限法所定の利率を超えて約定利息を収受した貸金業者は、「悪意の受益者」に該当する旨を判示しました。
任意交渉の段階では、新生フィナンシャルは、過払い利息を一切考慮しません。そのため、過払い利息を含めた金額を回収するには必ず訴訟を提起する必要があります。訴訟になった場合、上記「特段の事情」の有無が争点となります。
もっとも、新生フィナンシャルは、抽象的に「特段の事情」が認められるという趣旨の主張はするものの、「特段の事情」が認められるために必要な期限の利益喪失約款以外のみなし弁済が認められる要件である貸金業法17条書面、18条書面を提出すらしてこないことがほとんどです。そのため、新生フィナンシャルからの主張、立証は不十分であると判断されるケースが圧倒的多数です。
約定残債務が残っている状態で、支払いが滞った場合又は新生フィナンシャルに対し、ご依頼者様がご自身で判断されて支払条件の変更を申し出た場合、ご依頼者様と新生フィナンシャルとの間で「示談書」、「債務弁済契約書」といった合意書を作成されている場合が見受けられます。合意書の名称如何に関わらず、内容としては、
旨が定められている例が多く見受けられます。合意書が作成されていた時点で利息制限法所定の利率に引き直し計算をすれば、過払いとなっているのであれば、合意書の内容どおりに支払う必要は本来ありません。
しかし、合意書が作成された時点で考えると、借主は、新生フィナンシャルからお金を借りている立場にあり、新生フィナンシャルとの関係では圧倒的に不利な立場にありますし、そもそも利息制限法所定の利率に引き直して計算するという発想自体がない例がほとんどです。新生フィナンシャルは、過払い請求に対し、この合意書の存在を主張し、合意書作成時点で過払い金が発生していたとしても合意書の作成により借主の新生フィナンシャルに対する過払い金の請求権も含め、新生フィナンシャルとの間の債権債務は合意書に定める内容どおり確定しているから、新生フィナンシャルには、過払い金の支払義務は無い旨の反論をしてきます。
合意書によって過払い請求が遮断されるかどうかという点についての裁判所の判断は分かれています。合意書の作成経緯、合意書が作成された当時の過払い金の金額、合意書作成時に借主が約定債務の一部免除を受けているかどうか(受けているとすればその金額)等の種々の事情を勘案しての総合的な判断が必要です。特に新生フィナンシャルの場合、利息制限法所定の利率に引き直し計算を行った後の残債務をある程度考慮した上で約定債務を一部免除している例が見られます。どちらの主張が認められるかは、事案、裁判所の判断によりけりといえます。
新生フィナンシャルと長期間に渡ってキャッシング取引を続けた場合、借主は、途中で完済し、しばらく期間が経ってから再度取引を再開する場合があります。
途中で完済した際に、新生フィナンシャルとの契約を解約し、再度契約を締結して取引を再開している場合、又は、途中で完済してから再度取引を再開するまでの期間(以下、「空白期間」と言います。)が1年以上空いている場合には、新生フィナンシャルは完済の先後で過払い金の計算を個別に計算する計算方法(以下、「個別計算」と言います。これに対して、完済前後で過払い金の計算を区分せずに計算する方法を「一連計算」と言います。当事務所は、原則として一連計算の方法を採用し、過払い請求をします。)を採用してきます。個別計算を採用すると、完済時点から過払い請求時点まで10年以上の期間が経過している場合、過払い金の請求権は、時効により消滅します(民法第167条第1項)。その結果、完済以前までに発生していた過払い金は請求できなくなりますので、回収できる過払い金は、減額します。
最近の裁判所の傾向としては、個別計算の主張を判断するにあたって
を総合考慮して判断しているように見受けられます。この要素の中でも特に重視されるのが、a(b)及びcです。任意交渉の段階では、完済時に解約している場合又は空白期間が1年以上空いている場合には、新生フィナンシャルは、必ず個別計算を主張しますので、一連計算による過払い金の回収を希望する場合には、訴訟提起が必要です。 新生フィナンシャルから開示される取引履歴だけでは、完済時に解約しているかどうかは判然としません。また、契約の条件を変更した日時と変更内容について断片的な資料が提出される場合があります。しかし、当該資料も契約条件が変更されたことを確認できる程度です。そのため、新生フィナンシャルの側が訴訟になって契約の条件を変更した日時の時点で実は別契約を締結していたという主張をしてくることもあります。当事務所は、このような主張に対しても、単なる契約条件の変更に過ぎないことを主張することでもって、一連計算を認めさせてきた実績があります。ご依頼者様ご本人が契約書を保存しているような場合には、当該資料から解約の有無について判断できる場合があります。
新生フィナンシャルは、平成5年9月以前の取引履歴は破棄処分したと主張しており、開示しません。
取引履歴が存在しない部分については、借入及び返済の日時、金額が特定できないため、平成5年9月以前の取引について原則として利息制限法所定の利率に引き直し計算をすることはできず、過払い請求はできません。もっとも、平成5年9月以前の取引内容を特定できる資料がある場合には、当該資料に基づいて取引履歴がない部分の取引を推測し、請求する推定計算という方法があります。
基本契約に基づき、リボルビング取引を繰り返しているような場合、契約書によって基本契約の契約条件が特定できれば、毎月の返済日、最低返済額は領収書等と併せることによりある程度は特定することが可能です。当事務所では、新生フィナンシャルから断片的に平成5年9月以前の契約条件が開示された場合やご依頼者様ご本人が平成5年9月以前の契約書を保存していた場合には、推定計算をして、平成5年9月以前の取引についても過払い請求をしています。
新生フィナンシャルは、推定計算については一切認めないため、任意交渉で推定計算をした部分の過払い金を回収することはできず、推定計算をした部分も含めて回収するには訴訟提起が必要です。裁判所はあくまで客観的資料に依拠して、推定計算に合理性が認められるかどうかを判断します。
平成5年9月以前も取引があったということが分かるだけでは足りず、どのような契約条件で借入、返済を繰り返してきたのかまで主張、立証しなければならないため、判決となった場合には推定計算の争点のハードルは高いのが現状です。もっとも、推定計算について双方ある程度主張・立証を尽くした段階で推定計算部分を考慮した和解案が提示される例も多くありますので、推定計算部分を考慮した和解を最終的な着地点として推定計算をすることはより多く回収するために有効です。