昭和43年10月29日 最高裁判所第三小法廷 昭和42(オ)967
争点 |
債権者と債務者間に数口の貸金債権が存在するとき、ある債務について発生した過払い金は他の債務に充当されるか。 |
結論 |
ある債務について発生した過払い金は他の債務に充当される。 |
裁判要旨 |
- 債権者と債務者間に数口の貸金債権が存在し、弁済充当の順序について特約が存在する場合において、債務者が利息制限法所定の制限をこえる利息を支払ったときは、右超過部分に対する弁済は、右特約の趣旨に従って次順位に充当されるべき債務で有効に存在するものに充当されるものと解すべきである。
- 裁判所は、利息制限法所定の制限をこえて任意に支払われた利息・損害金の存在することが弁論にあらわれ、これを確定した以上、当事者から右制限超過分を残存元本等に充当すべき旨の特別の申立ないし抗弁が提出されなくても、右弁済充当関係を判断することができる。
- 連帯債務者の一人が利息制限法所定の制限をこえる利息を支払つても、他の連帯債務者に対して右制限をこえる利息相当金を求償することはできない。
- 金銭を目的とする消費貸借上の利息について利息制限法第1条第1項の利率の制限をこえる約定があるが、遅延損害金の約定がない場合には、遅延損害金についても利息制限法第1条の制限額にまで減縮され、その限度で支払を求めうるにすぎない。
|
全文 |
昭和43年10月29日 最高裁判所第三小法廷 昭和42(オ)967 全文 |
平成15年07月18日 最高裁判所第二小法廷 平成13(受)1032
争点 |
基本契約に基づく継続的な消費貸借契約で過払い金が発生した場合、その当時存在する他の借入金債務に充当されるか。 |
結論 |
基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される消費貸借契約では、過払い金は、過払い金発生当時に存在する他の借入金債務に充当される。 |
裁判要旨 |
- 貸金業者甲の受ける利息、調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること、乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く、乙の受ける保証料等の割合と甲の受ける利息等の割合との合計は乙を設立する以前に甲が受けていた利息等の割合とほぼ同程度であったこと、乙は甲の貸付けに限って保証しており、甲から手形貸付けを受ける場合には乙の保証を付けることが条件とされていること、乙は、甲に対し、保証委託契約の締結業務、保証料の徴収業務、信用調査業務及び保証の可否の決定業務の委託等をしており、債権回収業務も甲が相当程度代行していたことなど判示の事実関係の下においては、乙の受ける保証料等は、甲の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たる。
- 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において、借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い、この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は、当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り、民法489条及び491条の規定に従って、弁済当時存在する他の借入金債務に充当され、当該他の借入金債務の利率が利息制限法所定の制限を超える場合には、貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができない。
|
全文 |
平成15年07月18日 最高裁判所第二小法廷 平成13(受)1032 全文 |
平成19年02月13日 最高裁判所第三小法廷 平成18(受)1187
争点 |
基本契約のない複数取引の場合の充当関係。 |
結論 |
基本契約のない複数取引の場合、特段の事情のない限り、第1貸付け過払い金は、第2貸付け債務には充当されない。 |
裁判要旨 |
- 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において、第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し、その後、第2の貸付けに係る債務が発生したときには、特段の事情のない限り、第1の貸付けに係る過払金は、第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず、第2の貸付けに係る債務には充当されない。
- 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5分である。
|
解説 |
平成19年02月13日 最高裁判所第三小法廷 平成18(受)1187の争点や結論に関する解説 |
全文 |
平成19年02月13日 最高裁判所第三小法廷 平成18(受)1187 全文 |
平成19年06月07日 最高裁判所第一小法廷 平成18(受)1887
争点 |
カードの利用による継続的な金銭の貸付けを予定した基本契約で過払い金が発生した場合、弁済当時他の借入金債務が存在しなければこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものか。 |
結論 |
カードの利用による継続的な金銭の貸付けを予定した基本契約が、同契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払い金が発生した場合には弁済当時他の借入金債務が存在しなければこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいる。 |
裁判要旨 |
同一の貸主と借主との間でカードを利用して継続的に金銭の貸付けとその返済が繰り返されることを予定した基本契約が締結されており、同契約には、毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ、利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算するなどの条項があって、これに基づく債務の弁済が借入金の全体に対して行われるものと解されるという事情の下においては、上記基本契約は、同契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には、弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。 |
解説 |
平成19年06月07日 最高裁判所第一小法廷 平成18(受)1887の争点や結論に関する解説 |
全文 |
平成19年06月07日 最高裁判所第一小法廷 平成18(受)1887 全文 |
平成19年07月19日 最高裁判所第一小法廷 平成18(受)1534
争点 |
各貸付が1個の連続した貸付取引である場合には、過払い金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する合意をしているものといえるかどうか。 |
結論 |
同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずに切替及び貸増しとしてされた多数回の貸付にかかる金銭消費貸借契約は、利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払い金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解される。 |
裁判要旨 |
同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずにされた多数回の金銭の貸付けが、1度の貸付けを除き、従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており、その1度の貸付けも、前回の返済から期間的に接着し、前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであり、上記各貸付けは1個の連続した貸付取引と解すべきものであるという判示の事情の下においては、各貸付けに係る金銭消費貸借契約は、各貸付けに基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には、当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。 |
全文 |
平成19年07月19日 最高裁判所第一小法廷 平成18(受)1534 全文 |
平成20年01月18日 最高裁判所第二小法廷 平成18(受)2268
争点 |
- 第1の基本契約に基づく継続的な金銭の貸し付けに対する過払い金をその後に締結された第2の基本契約に基づく継続的な金銭の貸し付けにかかる債務に充当することの可否。
- 第1の基本契約に基づく継続的な金銭の貸し付けに対する過払い金をその後に締結された第2の基本契約に基づく継続的な金銭の貸し付けにかかる債務に充当する旨の合意が存在すると解すべき場合とはいかなる場合か。
|
裁判要旨 |
- 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない。
- 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合において、第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときには、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。
|
解説 |
平成20年01月18日 最高裁判所第二小法廷 平成18(受)2268の争点や結論に関する解説 |
全文 |
平成20年01月18日 最高裁判所第二小法廷 平成18(受)2268 全文 |
平成23年07月14日 最高裁判所第一小法廷 平成23(受)332
争点 |
複数の異なる基本契約に基づく取引がなされた場合に、各取引に「当初の契約期間経過後も、当事者からの申出がない限り当該契約を2年間継続し、その後も同様とする」旨の定め(自動継続条項)があり、実際、各当事者から自動更新前に基本契約を打ち切る旨の申し入れがなされたと認めるべき事情がないとき、各基本契約に基づく取引の期間や各取引の間の期間を考慮することなく、当該自動継続条項を根拠として、各取引が一連のものとして継続していたとみることはできるか。 |
結論 |
4つの異なる基本契約に基づく各取引の間に、それぞれ約1年6か月、約2年2か月、約2年4か月の期間があるにもかかわらず、これらの期間を考慮することなく、自動継続条項が置かれていることから、各取引が事実上1個の連続した取引であるとし、先行する取引において発生した過払金を、後に締結された基本契約に基づく取引に係る借入金債務に充当する旨の合意が存在したと判断することはできない。 |
裁判要旨 |
金銭消費貸借に係る基本契約が順次締結され、これらに基づく金銭の借入れと弁済が繰り返された場合において、先に締結された基本契約に基づく最終の弁済からその後に締結された基本契約に基づく最初の貸付けまでの間に、約1年6か月ないし約2年4か月の期間があるにもかかわらず、これらの期間を考慮することなく、各基本契約に当初の契約期間の経過後も当事者からの申出がない限り当該契約を2年間継続し、その後も同様とする旨の定めが置かれていることから、先に締結された基本契約に基づく取引により発生した各過払金をその後に締結された基本契約に基づく取引に係る各借入金債務に充当する旨の合意が存在するとした原審の判断には、違法がある。 |
解説 |
平成23年07月14日 最高裁判所第一小法廷 平成23(受)332の争点や結論に関する解説 |
平成24年09月11日 最高裁判所第三小法廷 平成23(受)122
争点 |
無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約に基づく取引により発生した過払金を不動産に担保権を設定した上で締結された確定金額に係る金銭消費貸借契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することの可否 |
結論 |
当事者が本件第1契約及び本件第2契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしているとみるべき事情のうかがわれない本件においては,本件第1契約に基づく取引と本件第2契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することは困難である。 |
裁判要旨 |
同一の貸主と借主との間で無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約に基づく取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約が締結された場合において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1の契約に基づく取引は長期にわたって継続しており,第2の契約が締結された時点では当事者間に他に債務を生じさせる契約がないことなどの事情があっても,当事者が第1の契約及び第2の契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情がない限り,第1の契約に基づく取引により発生した過払金を第2の契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することはできない。 |
全文 |
平成24年09月11日 最高裁判所第三小法廷 平成23(受)122 全文 |