過払い金に関するご相談は03-5293-1775までお電話ください 過払い金に関するご相談は03-5293-1775までお電話ください
過払い金についての相談申し込み
過払い金返還.com
過払い金の相談は日比谷ステーション法律事務所 03-5293-1775 まで メニューを開く メニューを閉じる

平成20年01月18日 最高裁判所第二小法廷 平成18(受)2268 解説

裁判情報

裁判 平成20年01月18日 最高裁判所第二小法廷 平成18(受)2268
本判例の背景

近時の最高裁判決は,基本契約が締結されている場合には当該基本契約の解釈によって,基本契約が締結されていない場合には貸付けの状況から,過払い金充当合意を含むかどうかを解釈し,この合意を根拠に取引の一連性を判断するという考え方を採ってきました。

そして,基本契約が複数締結されている場合にも同じような考え方を採るべきか否かということを判断したのが本判例です。

事案の概要

本判決の事案は,貸金業者と債務者との間で,継続的に金銭の借入と弁済が繰り返されるいわゆるリボルビング方式の貸付けに係る基本契約が2個締結されていたが,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでには約3年間が経過していたというものです。
このような場合,両取引を一連のものとして計算することは許されるでしょうか。

要旨 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が、利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合には、上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は、特段の事情がない限り、上記取引が終了した時から進行する。

事案の概要

最高裁は,一般論として「1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない。」とした上で,「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときには、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。」と判示し,充当を肯定した原審を破棄し,特段の事情の有無につきさらに審理を尽くさせるために原審に差し戻しました。

事案の概要

(1) 判例の基本的な考え方

本判決では,異なる基本契約間おける過払い金発生後に生じた他の借入金債務への充当の可否が問題となりました。最高裁は,原審が本件2個の基本契約は実質上1個のリボルビング方式の貸付けとみられるとしたのに対して,事実上1個の連続した取引と評価する際の事情を列挙し,それについて審理を尽くさせるために原審に差し戻しをしました。
本判決は,「事実上1個の連続した取引」といえるかどうかによって充当の可否を決していますが,充当合意の認定にとってより本質的な問題は,利息制限法の適用の効果としての充当はどうあるべきかという点にあります。本判決で列挙された事情は,貸付けと返済の反復継続性,及び,後行の取引がその反復継続の範囲内にあるかどうかにより,充当合意があったかどうかを判断するものであり,判例の基礎には,充当は根本的には意思を根拠に認められるという考え方をとっていることがわかります。
もっとも,本判決は,「特段の事情」が認められる場合に他の借入金債務に充当されると判示します。そして,本判決は,指定充当を複数個の金銭消費貸借契約には妥当しないという判断を示したのではなく,むしろ,「特段の事情」という枠組みを用いて「弁済充当の合意」に基づく充当を一般論として認めており,この点において最高裁平成19年07月19日判決最高裁平成20年01月18日判決と整合するものといえるでしょう。

(2) 判例の列挙する事情の意味合い

ここで,判例が充当合意の有無を判断する際考慮すべきものとしてあげた事情を1つ1つ検討してみましょう

ア 第1取引期間の長さ・最終弁済から第2取引開始までの期間

例えば,第1の基本契約の取引期間が長期にわたり,その最終弁済から第2の基本契約の最初の貸付けまでの期間が短期だったような場合,両取引は実質的には一連の取引といえ,第1の取引で生じた過払い金を第2の取引による借入金債務に充当する合意があったものと認められやすくなります(下記例A)。逆に,第1の取引期間が比較的短期であり,両取引の間の期間が長期に及ぶような場合には,両取引は別の取引であり,充当合意が認められない方向に働きます(下記例B)。

第1取引   第2取引
第1取引   第2取引

イ 第1取引基本契約書返還の有無

第1の基本契約書がその最終弁済後に債務者に返還されたような場合,それは第1の基本契約が終了したことを裏付ける事情といえるものであるとして,その後締結された第2の基本契約とは別の取引であると認められやすくなります。なお,基本契約書の返還は第1の基本契約終了後第2の基本契約締結前でなければ意味がないものといえます。

ウ カード失効手続の有無

上記イと同様に,第1の基本契約に基づくカードについて失効手続がなされているような場合には,それにより第1の基本契約が終了したものといいやすく,両取引は別個のものであり充当合意は認められないという方向に働きます。

エ 第1取引と第2取引間における貸主と借主との接触の状況,第2基本契約が締結されるに至る経緯

たとえば,第1の基本契約の最終弁済の後,当該貸金業者の担当者が債務者に対して再度の借入れを積極的に勧誘し,これに基づき債務者が第2の基本契約を締結したような場合,債務者としては第1の取引に引き続き借入れをするものとの認識を持ちやすくなりますので,両取引は一連のものであり,充当合意があるものと認められやすくなります。

オ 第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等

第1と第2の基本契約の利率や遅延損害金,返還方法等の約定が同じであった場合,両取引は一連のものと認められやすくなります。
もっとも,貸金業者は同一の基本契約に基づく取引であっても利率や遅延損害金を改定することが頻繁にあり,契約条件の差異のみをもって取引の分断が認められるべきではないと考えられます。

カ まとめ

上記の事情が総合的に考慮され,取引の一連性ひいては充当合意の有無が判断されます。すなわち,イの契約書の返還の事実が認められたとしても,その一事をもって充当合意の有無が判断されるということはありません。

本判決の意義

本判決は,基本契約が複数締結されている場合についても,過払い金充当合意が存在するものと解するのが相当である場合には,この合意を根拠に一連計算をすることが肯定されることを明らかにするとともに,過払い金充当合意の存在を認定するにあたって裁判所が考慮すべき諸事情を具体的に例示しました。 基本契約が複数締結されている場合であっても,事情によっては一連計算が認められることを明確にした判例であり,当事務所においても本判例を援用して一連計算による過払金回収を多数実現しております。

過払い金に関するご相談は03-5293-1775までお電話ください 過払い金に関するご相談は03-5293-1775までお電話ください
  • 相談無料
  • 土日対応可
  • 報酬は後払い
  • 夜間対応可
  • 報酬は回収金の12%
過払い金について相談する