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平成21年4月14日 最高裁判所第三小法廷 (平成19(受)996)他  解説

裁判情報

裁判
  • 平成21年4月14日 最高裁判所第三小法廷 (平成19(受)996)
  • 平成21年9月11日 最高裁判所第二小法廷 (平成19(受)1128)
  • 平成21年9月11日 最高裁判所第二小法廷 (平成21(受)138)

解説

貸金業者は消費者に対して貸付を行う際に基本契約書を作成するのが通常ですが,多くの場合,その基本契約書には一定の事由(例えば約定の支払日に弁済が遅れたこと等)が生じた場合には期限の利益(借入金を一括弁済せず,分割払いやリボルビング払いをする権利のことをいいます)を喪失する旨の条項が定められています。
消費者が期限の利益を喪失した場合,貸金業者は貸付金全額の一括払いを請求することができるほか,元金に対して遅延損害金を付加して請求することも可能となります。遅延損害金の利率は,利息制限法に規定する法定利率の1.46倍まで許容されています。そのため,期限の利益喪失の主張が認められてしまうと引き直し計算に大きな影響が生じ,結果として過払金返還請求訴訟で回収できる金額が減少することになります。
貸金業者は,借主が期限の利益を喪失した後でも,期限の利益を喪失していない時と同様に貸付や返済を繰り返していることが常態となっており,貸金業者も借主も期限の利益を喪失していないことを前提に取引を継続しています。それにもかかわらず,貸金業者が過払金返還請求訴訟のなかで突如として期限の利益喪失を主張することがあります。このような主張は信義則に反し許されないとするのが下級審判例の大勢でした。
ところが,最高裁判決の中に,期限の利益喪失の主張は信義則に反しないとしたものが現れました。最高裁が,期限の利益喪失の主張が信義則に反しないとした事案は,以下のようなものです。

1 最判平成21年4月14日(最高裁平19(受)第996号)

貸金業者が,貸付にかかる債務につき,借主が期限の利益を喪失した後に,借主に対して残元利金の一括払いを請求せず,借主から長期間多数回に渡って分割弁済を受けていた場合において,貸金業者が,債務の弁済を受けるたびに受領した金員を利息ではなく損害金へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していた。

2 最判平成21年9月11日(最高裁平19(受)第1128号)

貸金業者が,借主に対し,元利金の支払いを怠ったときは当然に期限の利益を喪失する旨の特約のもとに3回にわたり金銭の貸付けを行い,各貸付けにつき借主が期限の利益を喪失した後に,一部弁済を受領するつど,弁済金を遅延損害金のみまたは遅延損害金と元金の一部に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していた。また,以下の事情があった。(1)貸金業者は借主が期限の利益を喪失した後も元利金の一括弁済を求めず,借主からの一部弁済を受領し続けた。(2)上記貸付けにおける約定の利息の利率と遅延損害金の利率とが同一ないし近似していた。(3)貸金業者は,借主が1回目および2回目の各貸付について期限の利益を喪失した後に3 回目の貸付を行った。

もっとも,期限の利益喪失の主張が信義に反し許されないとする最高裁判例も現れました。その判例の事案は以下のようなものです。

3 最判平成21年9月11日(最高裁平21(受)第138号)

貸金業者が,借主に対し,元利金の支払いを怠ったときは当然に期限の利益を喪失する旨の特約のもとに金銭の貸付けを行い,借主が期限の利益を喪失した後に,一部弁済を受領するつど,弁済金を遅延損害金と元金の一部に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を送付していた。また,以下の事情があった。(1)上記貸付に係る契約には,遅延損害金の利率を年36.5%としつつ,期限の利益喪失後も当初の約定の支払い期日までに支払われた遅延損害金については,その利率を利息の利率と同じ年29.8%とする旨の特約が付されていた。(2)貸金業者の担当者は,借主が期限の利益を喪失した約定の支払期日の前に,約定に従えば支払うべき元利金の合計額を下回る金員を支払えば足りる旨述べていた上,貸金業者は,同支払期日の翌日に借主が支払った弁済金につき,これを利息と元本に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付した。(3)その後も,貸金業者の担当者は,借主が同担当者に対して支払いが約定の支払期日の翌日に支払う場合の支払金額として年29.8%に割合で計算した金利と毎月返済すべきこととされていた元金との合計額を告げた。(4)上記(1)から(3)までの貸金業者の対応などにより,借主は,期限の利益を喪失していないと誤信し,貸金業者も,その誤信を知りながらこれを解くことなく,長期間,借主が経過利息と誤信して支払った金員等を受領し続けた。

最高裁判例の比較

上記1と2の最高裁判例によると,貸金業者が弁済金を遅延損害金に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を発行していた事案の場合には,期限の利益喪失の主張は信義則に反せず認められることになります。その理由は,貸金業者が弁済金を遅延損害金に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を発行していた場合には,期限の利益を喪失したことを貸金業者も借主も了解したうえで以降の取引を継続していたといえる点にあるものと思われます。
他方で,貸金業者が弁済金を遅延損害金に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を発行していない事案については,最高裁判例はまだありません。もっとも,下級審判例は,期限の利益喪失を認めないものが大勢です。つまり,貸金業者が弁済金を遅延損害金に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を発行していない場合には,期限の利益喪失前後を通じて同様の取引が継続して,貸金業者も借主も期限の利益が喪失していないことを前提に取引をしていたことになります。それにもかかわらず,貸金業者が訴訟の場で突如として期限の利益喪失の主張をすることは,借主の期待を裏切るものであり信義則に反するため,期限の利益喪失の主張は認められません。大多数の貸金業者は,弁済金を遅延損害金に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を発行していませんので,期限の利益喪失の主張は認められないことになると思われます。
上記3の最高裁判例のように,弁済金を遅延損害金に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を発行していた場合でも,期限の利益喪失の主張が信義則に反し許されない場合もあります。ただし,この判例の事案は極めて例外的なものですので,この判例の射程がどこまで及ぶのかは今後の事案の集積を待つことになりそうです。

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