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平成23年12月1日 最高裁判所第一小法廷 平成23(受)307 解説

裁判情報

裁判 平成23年12月1日 最高裁判所第一小法廷 平成23(受)307
争点 貸金業者が17条書面として交付した書面に個々の貸付けの時点での最低返済金額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載がなかった場合,貸金業法43条1項(みなし弁済)の適用があると信じるにつき特段の事情があるといえるか。
結論 リボルビング方式の貸付けについて,17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は,当該貸金業者が制限超過部分の受領につき貸金業法43条1項(みなし弁済)の適用があると信じるにつき特段の事情があるとはいえず,当該貸金業者は「悪意の受益者」にあたる。

問題点と判例の理解

1 「悪意の受益者」該当性に関する従前の判例

最高裁平成19年7月13日判決(平成17(受)1970)は,制限利率を上回る利息を債務の弁済として受領した貸金業者が「悪意の受益者」にあたるかどうかという点に関して,貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用(いわゆる「みなし弁済」)が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるという判断を示していました。
もっとも,同判決は,悪意の受益者であるとの推定を覆す特段の事情が具体的にいかなる場合に認められるかについては述べておらず,その後の判例の集積を待つ必要があり,同判決と同日に言い渡された最高裁平成19年7月13日判決(平成18(受)276)最高裁平成21年7月10日判決最高裁平成21年7月14日判決が,特段の事情の有無について重要な判断を示していたところでした。

2 なぜ本判決の争点が問題になったか

本件では,いわゆるリボルビング方式の貸付(借主が借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができ,毎月定められた返済期日に最低返済額以上の元金を経過利息と共に返済するという内容の金銭消費貸借基本契約に基づく貸付け)において,貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合に,貸金業者が「悪意の受益者」にあたるかどうかという点が争われました。
この点に関連して,最高裁平成17年12月15日判決(以下「平成17年判決」といいます。)は,リボルビング方式の貸付けをしたときには,各貸付けごとに借主に交付すべき貸金業法17条1項に規定する書面に,「返済期間及び返済回数」及び各回の「返済金額」として,確定的な記載が不可能であっても,確定的な記載に準じた事項として,当該貸付けを含めたその時点での全貸付けの残元利金について,毎月定められた返済期日に最低返済額及び経過利息を返済する場合の返済期間,返済回数及び各回の返済金額を記載すべきであると判断していました。
本判決では,平成17年判決が出されるまでは,17条書面に記載すべき事項について下級審の裁判例が分かれており,次回の最低返済額とその返済期日が記載されていれば足りるとする裁判例も相当程度存在し,監督官庁が貸金業法17条1項各号に掲げる事項のうち特定し得る事項のみ記載すれば足りると読むこともできる通達を出していたので,本件貸金業者は,貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があったのではないかということが問題になりました。

3 本判決の判断について

本判決は,貸金業法17条1項に規定する書面に,上記確定的な記載に準じた事項を記載すべきことが,借主が自己の債務の状況を認識し,返済計画を立てることを容易にするという同条項の趣旨・目的に沿うものであることは,平成17年判決の言渡し日以前であっても貸金業者において認識し得たというべきであるとしました。また,平成17年判決が言い渡される前に,下級審の裁判例や学説において,リボルビング方式の貸付けについては,17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用があるとの見解を採用するものが多数を占めていたとはいえないこと,上記の見解が貸金業法の立法に関与した者によって明確に示されていたわけでもないことは,当裁判所に顕著であるとしました。そして,これらの理由により,本件貸金業者が,貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があったとはいえず,「悪意の受益者」であると推定されると判断しました。

4 本判決を受けて,予想される貸金業者の対応

本判決で注意すべき点は,平成17年判決以前に,貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していた場合にどうなるかという点です。
本判決では,本件貸金業者(のうち1社)は,平成16年10月以降は貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していたと認定されており,そうすると,貸金業者は,同月以降はやはり貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるので,悪意の受益者ではなかったといえそうです。
もっとも,本判決は,本件においては,平成16年10月より前から過払い状態となり,貸金債務が存在していなかったので,同月以降は利息が発生する余地がなく,貸金業法43条1項の適用がないことも明らかであり,同月以降,17条書面として交付された書面に上記確定的な記載に準じた記載があったとしても,貸金業者がそれまでに発生した過払金の取得につき悪意の受益者である以上,この時期に発生した過払金の取得についても悪意の受益者であることを否定することはできないと判断しています。
そこで,逆にいえば,平成17年判決以前に,貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していた場合で,そのような記載をするようになる時点で過払状態になければ,当該貸金業者は悪意の受益者ではないと判断されるおそれがあることになります。
具体的には,本判決は,貸金業者2社のうち,プロミスについては平成14年10月以降,CFJについては平成16年10月以降,貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していたとの原審の事実認定を前提しています。そこで,今後,プロミスについては平成14年10月,CFJについては平成16年10月の時点で過払状態になければ,それ以降は悪意の受益者ではないと主張してくる可能性があります。

5 当事務所の方針

前項では,平成17年判決以前に,貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していた場合で,そのような記載をするようになる時点で過払状態になければ,貸金業者が悪意の受益者ではないと判断されるおそれがあると指摘しました。もっとも,そのように判断されるには,貸金業者の方で「貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していた」ことを立証できることが前提となります。そのため,貸金業者は,実際に「確定的な記載に準じた事項」が記載された当時の契約書を提出しなければならず,立証は必ずしも容易とはいえません。そこで,本判決に基づいて,上記のように悪意の受益者ではなかったことを主張してくる貸金業者に対しては,立証に不備があることを突いていくという対応が考えられます。
また,最高裁平成18年1月13日判決は,法定利率を超過する部分の利息支払いを怠った場合に期限の利益を喪失するという特約の下では,特段の事情のない限り,貸金業法43条1項の適用はないという判断をしました。当時ほとんど全ての業者が貸付の際に上記期限の利益喪失特約を定めていたので,同判決以降の取引については,特段の事情のない限り貸金業者は「悪意の受益者」とみなされることになります(なお,現在では各業者とも契約書から上記期限の利益喪失特約を削除しています。)。そこで,平成17年判決以前に,貸金業法17条1項に規定する書面に上記確定的な記載に準じた事項を記載していたとして,貸金業者が悪意の受益者ではないと判断される場合でも,その期間は上記平成18年判決までの期間に限定されることになるという反論をすることが考えられます。

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