プロミスは、平成19年以降、当事プロミスの子会社であった株式会社クラヴィス(旧商号として株式会社クオークローンや株式会社タンポート等があります。)が消費者の方と行っていた取引を引き継ぐための「切替契約」を推進しました。
このような場合に、クラヴィスとの取引によって発生した過払金を、プロミスに請求できるかどうかにつき、高裁での判断が分かれていましたが、平成23年9月30日に最高裁の判決が出されました。
最高裁判決は、クラヴィスとの取引で発生した過払金をプロミスが承継すべきであり、また、クラヴィス取引とプロミス取引を一連のものとして過払金額を計算すべきであることを認めました。
当事務所では最高裁判決が出される以前からプロミスに対してクラヴィス取引との一連計算による請求を積極的に行っておりましたが、最高裁判決が出されたことにより今後は下級審裁判所においても同旨の判決が下されることが見込まれるため、従来よりも過払金の回収が容易になるものと思われます。
・平成19年6月18日、クラヴィスとプロミスは業務提携契約を締結した。
・上告人は、本件取引1に係るクラヴィスの債権の移行を求める被上告人(以下、「プロミス」という。)の勧誘に応じて、平成19年8月1日、プロミスとの間で金銭消費貸借取引に係る基本契約(以下「本件切替契約」という。)を締結した。この際、上告人は、プロミスから、プロミスグループの再編により、クラヴィスに対して負担する債務をプロミスからの借入れにより完済する切替えについて承諾すること、本件取引1に係る約定利息を前提とする残債務(以下「約定残債務」という。)が48万5676円であることを確認し、これを完済するため、同額をクラヴィス名義の口座に振り込むことをプロミスに依頼すること、本件取引1に係る紛争等の窓口が今後プロミスとなることに異議はないことなどが記載された「残高確認書兼振込代行申込書」(以下「本件申込書」という。)を示され、これに署名して被上告人に差し入れた。
・プロミスとクラヴィスは、平成20年12月15日、本件業務提携契約のうち本件債務引受条項を変更し、過払金等返還債務につき、クラヴィスのみが負担し、プロミスは切替顧客に対し何らの債務及び責任を負わないことを内容とする契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。
・上記勧誘に当たって表示されたプロミスの意思としては、これを合理的に解釈すれば、上告人が上記勧誘に応じた場合には、プロミスが、上告人とクラヴィスとの間で生じた債権を全て承継し、債務を全て引き受けることをその内容とするものとみるのが相当である。
そして、上告人は、上記の意思を表示したプロミスの勧誘に応じ、本件申込書に署名してプロミスに差し入れているのであるから、上告人もまた、クラヴィスとの間で生じた債権債務をプロミスが全てそのまま承継し、又は引き受けることを前提に、上記勧誘に応じ、本件切替契約を締結したものと解するのが合理的である。
・本件申込書には、クラヴィスに対して負担する債務をプロミスからの借入れにより完済する切替えについて承諾すること、本件取引1に係る約定残債務の額を確認し、これを完済するため、同額をクラヴィス名義の口座に振り込むことを依頼することも記載されているが、本件申込書は、上記勧誘に応じて差し入れられたものであり、実際にも、上告人がプロミスから借入金を受領して、これをもって自らクラヴィスに返済するという手続が執られることはなく、プロミスとその完全子会社であるクラヴィスとの間で直接送金手続が行われたにすぎない上に、上記の記載を本件申込書の他の記載部分と対照してみるならば、上告人は、本件取引1に基づく約定残債務に係るクラヴィスの債権をプロミスに承継させるための形式的な会計処理として、クラヴィスに対する約定残債務相当額をプロミスから借り入れ、その借入金をもって上記約定残債務相当額を弁済するという処理を行うことを承諾したにすぎないものと解される。
・上告人とプロミスとは、本件切替契約の締結に当たり、プロミスが、上告人との関係において、本件取引1に係る債権を承継するにとどまらず、債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり、この債務には、過払金等返還債務も含まれていると解される。
・上告人が上記合意をしたことにより、論旨が指摘するような第三者のためにする契約の性質を有する本件債務引受条項について受益の意思表示もされていると解することができる。そして、プロミスが上告人と上記のとおり合意した以上、その後、プロミスとクラヴィスとの間において本件変更契約が締結されたからといって、上記合意の効力が左右される余地はなく、また、上告人が、本件取引1に基づく約定残債務相当額をプロミスから借り入れ、その借入金をもって本件取引1に基づく約定残債務を完済するという会計処理は、クラヴィスからプロミスに対する貸金債権の承継を行うための形式的な会計処理にとどまるものというべきであるから、本件取引1と本件取引2とは一連のものとして過払金の額を計算すべきであることは明らかである。
・したがって、プロミスは、上告人に対し、本件取引1と本件取引2とを一連のものとして制限超過部分を元本に充当した結果生ずる過払金につき、その返還に係る債務を負うというべきである。